「謹啓」とはどんな言葉?
「謹啓」の意味は、「謹んで申し上げます」です。
類語は、「謹呈」「恭啓」。
英語で表すときは、「Ladies and Gentlemen」「Dear Mr.(相手の名前)」などを使います。
「謹啓」とはどんな意味?読み方は?
「謹啓」の読み方は「きんけい」です。フォーマルな手紙の冒頭に書く頭語で、次の意味を表します。
「謹啓」をはじめとする頭語は、単独で使われることはありません。それぞれの頭語によってふさわしい結語(結びの言葉)があります。
「謹啓」の場合は、結語として「謹言(きんげん)」「謹白(きんぱく)」「敬白(けいはく)」「頓首(とんしゅ)」のどれかが使われることが多いです。
「謹啓」を使うのはどんなとき?
「謹啓」は、敬意の度合いが高いかしこまった頭語のため、目上の相手へ送る手紙や、改まった手紙を書くときに使います。例えば、次のようなときに使用する場合が多いです。
・お礼状を送る場合
・お詫び状を送る場合
・「社名変更」「会社幹部の就任、退任」「本社移転案内」「会社設立案内」など、改まった案内文を送る場合
・ビジネスで見積書や契約書など、重要な書面作成を依頼する文書を送る場合
・パーティーなどの招待状を送る場合
・栄転や昇進の祝い状を送る場合
・結婚式や披露宴の招待状を送る場合
・法要の案内状を送る場合
上記の例をみてもらうとわかるように、「謹啓」を用いるのはかなりフォーマルなシーンばかりです。
ビジネスでは、企業や取引先へ改まった文書を送る場合に使います。個人へは、儀礼的な手紙を書くときに用いるのが一般的で、日常的な手紙には使用しません。
また、「謹啓」は非常に儀礼的でかしこまった言葉のため、親しい相手に手紙を出すときに使うのには向きません。他人行儀すぎて失礼だと思われてしまう恐れがあるので注意してください。
「謹啓」の次は挨拶の文を書く
頭語として「謹啓」を使うときは、「謹啓」の次に「季節の挨拶(時候の挨拶)」を書き、その次に「相手の安否を気遣う言葉」「日頃の感謝を伝える言葉」を書きます。
季節の挨拶は、月によって挨拶の言葉を使い分けてください。例えば同じ秋でも、9月に手紙を出すならば「初秋の候」や「虫の音に秋の訪れを感じるころとなりました。」、10月なら「秋冷の候」や「菊の花が香る季節となりました。」のように挨拶文を変更します。
「お詫び状」では季節の挨拶は省く
「お詫び状」を書くときは、季節の挨拶は不要です。
「謹啓」のあとは、「貴社ますますのご清栄のこととお喜び申し上げます。」などの「相手の健康や繁栄などを祝う」挨拶言葉で始め、次に「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。」などの「日頃の感謝を伝える言葉」を記します。
その次に「謝罪の言葉」を書き、続けて状況説明やトラブルの原因、対応策などを誠実、正確に記入していきます。
本題の後は結びの言葉
本題に関する文章を書き終えたら、「今後の厚いよしみを願う文」や「先方の健康を祈る文」「お礼やお詫び」などの、「結びの言葉」を記入しましょう。
ビジネスでは、「結びの言葉」として「今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。」などの言い回しが使われることが多いです。
そして、最後に「謹白」などの結語を記し、手紙の本文を締めます。
「謹啓」「謹白」のレイアウト
「謹啓」をはじめとする頭語は、手紙の1行目の最初の位置に、1文字分のスペースを空けることなく記入します。
そこから先の手紙の書き方のレイアウトは、絶対の決まりはありません。縦書き、横書きどちらの書き方でも「謹啓」「謹白」を用いることができ、インターネットで検索すると複数のパターンの書き方の例文をみつけられます。
会社によって書き方が決まっている場合もあるので、まずは自分の職場でのルールを確認しましょう。とくに決まりがない場合は、自分のセンスで書き方を選んでください。
「謹啓」と「拝啓」の違い
「謹啓」と同じ意味をもつ頭語に「拝啓」があります。
「謹啓」と「拝啓」は、言葉の意味としては同じなのですが敬意の格が異なるため、使い分けが必要です。
「拝啓」は丁寧なニュアンスの頭語です。しかし、「謹啓」ほどかしこまった言葉ではありません。
そのため普段使いしやすく、日常的な内容の手紙や親しい相手への手紙に用います。「拝啓」を使用するときの結語は、「敬具」が一般的です。
「謹啓」の使い方を例文で学ぼう
「謹啓」の意味がわかったら、次は実際の手紙の書き出しを例文でイメージしてみましょう。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、ありがたく厚く御礼申し上げます。
平素より弊社製品をご愛顧賜り、誠にありがとうございます。
例文3に出てきた「時下」は、季節の挨拶の代わりに通年で使える表現です。
「謹啓」の類語・言い換え表現
「謹啓」を言い換えできる類語は、「謹呈(きんてい)」「恭啓(きょうけい)」です。それぞれの意味と使い方も頭に入れておきましょう。
謹んで手紙を差し上げます
【例文】
謹呈 あじさいの色が美しく映えるころとなりました。
山田様におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
謹んで申し上げます
【例文】
恭啓 盛夏の候、貴下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。
「謹啓」は英語だと?
「謹啓」を用いる手紙のように、丁寧な手紙を書くとき英語では、文の頭に次のような表現を使います。
Dear Sirs:会社や団体などにあてたフォーマルな手紙の場合
Dear Customer:お客様各位。不特定多数のお客様に送る手紙の場合
Dear Mr.(相手の男性の名字)、Dear Ms.(相手の女性の名字):個人に送るとき
Dear (相手のフルネーム):相手の名前から性別を判断できないとき
Dear (部署名や役職名):担当部署に送るとき。その役職に就いている人に送りたいとき
英国式のときは上記の表現の後に「,」をつけ、米国式のときは後ろに「:」をつけて使います。
「謹啓」はフォーマルな手紙に使おう
「謹啓」はかしこまった印象のある敬意の格が高い頭語です。日常的な手紙には向かず、フォーマルな手紙や重要な手紙に使用します。
同じ意味で、「謹啓」ほどはかしこまっていない「拝啓」と、うまく使い分けしましょう。