「イクボス」とは「育児を支援する上司」こと
イクボスとは、部下・同僚などの出産・育児を含めたプライベートを尊重し、仕事と生活(ワークライフバランス)を考え、キャリア支援を目指す上司のことをいい、厚生労働省が中心となり、労働環境改善政策のひとつとなっています。男性の育児休暇も認知されてきた現代においては知っておきたい用語です。本記事では、イクボスの詳しい内容、取り組みなどについてもわかりやすく紹介します。
「イクボス」の英語は「IkuBoss」
「イクボス」は日本語の造語のため、英訳はできないため、「IkuBoss」と書くしかありません。しかし、これでは英語圏の人には伝わらないため、英語で表現する場合はこのようになります。
・Supervisors who support childcare.
(子育てを応援する上司)
・A supervisor who takes work/life balance into consideration.
(ワークライフバランスに配慮してくれる上司)
「イクボス」の意味・概要
「イクボス」は、「育児(イク)」と「上司(ボス)」を組み合わせた造語で、部下・同僚などの出産・育児を含めたプライベートを尊重し、仕事と生活(ワークライフバランス)を考え、キャリア支援をしながらも、自分自身の仕事と私生活を楽しむことができる上司のことを指す言葉です。
日本でも男性が育児休暇を取得することについて前向きな企業が増えましたが、実際に休める環境にあるかどうかは、組織の上に立つ人が「イクボス」であるかどうかが鍵になります。「イクボス」となるのに年齢や性別は関係ありませんが、部下と自分のワークライフバランスを向上させるだけでなく、しっかりと組織としての成果も出していかなければなりません。
イクボスプロジェクトが提唱する「イクボス10ヵ条」
「イクボス」の推進は、厚生労働省が中心となって行ってはいるものの、公的な規定はありません。しかし、「イクボスプロジェクト」を発足させた、「NPO法人ファザーリング・ジャパン」が「イクボス10ヵ条」を策定し、10ヶ条のうち過半数以上を満たしていれば認定となる仕組みを作り、現在ではイクボスを推進する企業の行動指針となっています。では、ここで、10ヶ条の内容についても詳しく見ておきましょう。
(情報参照元:NPO法人ファザーリンク・ジャパン イクボスドットコム 「イクボス10か条とは」)
その1:理解
「ワーク(仕事)」だけでなく、「ライフ(プライベート)」を割くことにきちんと理解を示していること。上司になる人は、スタッフの育児状況を把握し、仕事が忙しいときにはサポート体制を整えるなどの配慮が必要です。
その2:ダイバーシティ
ダイバーシティは「多様性」という意味で、ビジネスシーンにおいては「年齢、性別、性格などにこだわらず、多用な人材を活かすこと」を指す用語です。イクボスと認められるには、「ライフ」を重要視しているスタッフに対して冷遇せず、「ワーク」に力を入れているスタッフについても不利益がないように配慮することが大切です。
その3:知識
組織の上司である以上、産休、育休、介護休暇などの社内制度や、労働基本法といった法律をきちんと理解しておかなければなりません。無理をしている様子が見えるスタッフに対しては、休暇制度を利用するよう促すことも大切です。
その4:組織浸透
組織の中には「仕事より家庭か!」と偏見をもつ人もいるでしょう。そんな人に対しては、プライベートを充実させることも良い仕事をするためには重要であること、この組織は「ライフ」も大切にしていい場所だということを理解させなければなりません。
その5:配慮
家族の転居が必要になる転勤、単身赴任にともなう転居など、スタッフの生活に大きな変化を及ぼすことについては、対象となるスタッフとしっかりと話し合い、スタッフと企業双方が合意するような配慮をしなければなりません。
その6:情報共有
産休、育休取得者が発生しても、組織内の業務がスムーズに実行できるよう、社内の情報共有の仕組みを構築しなければなりません。現代では、モバイル、クラウド化、テレワークなどのシステムも進化しているので、システムを構築しておけば、スタッフも産休、育休を取得しやすくなります。
その7:時間捻出
スタッフが「ライフ」の時間を捻出しやすいよう、「会議の削減」「書類のデジタル化」「意思決定の迅速化」など、業務の効率化を図らなければなりません。
その8:提言
「イクボス」の定着は、現場組織だけでなく、人事組織や上層部を含めた社内全体の取り組みが必要不可欠です。上層部に理解してくれない人がいる場合は、ワークライフバランスの大切さを広めていく努力も必要となります。
その9:有言実行
企業である以上、「業績をアップさせる」ということが一番重要なことです。ですので、「イクボス宣言をしている組織は業績も向上する」ということを示すための努力も必要となります。イクボス宣言をした企業が軒並み業績がアップすれば、「イクボス=業績アップ」のイメージが強くなり、導入する企業が増えるきっかけにもなるわけです。
その10:隗より始めよ
「隗より始めよ(かいよりはじめよ)」とは、「言いだした者から始めよ」という意味で、ボス自らがワークライフバランスを重視し、スタッフにその姿を見せることが大切です。
労働環境改善の取り組み「イクボス宣言」とは?
仕事と、子育てなどのプライベートのバランスを重視した労働環境づくりに対する取り組みを掲げる「イケボス宣言」が企業や自治体を中心として少しずつ広がり、厚生労働省のホームページでは「イクボス宣言」した企業が公開されています。
(情報参照元:厚生労働省 イクボス宣言)
現在では、厚生労働省での新規掲載はされていないものの、「イクボス宣言」の受付は継続しています。
(情報参照元:厚生労働省 イクメンプロジェクト イクボス宣言する/見る)
「イクボス」の使い方・例文
「イクボス」は文章としてよりも会話で多く使われる言葉です。参考までに例文をいくつか紹介しておきます。
・うちの課の課長、イクボス宣言しただけあって、自分で育休取得したよ。
・育児休暇を取得したいと考えていた男性が、「イクボス」を推奨しているうちの会社に転勤してきた。
・この会社はイクボスがいる部署ばかりなので、どこに配属されても産休や育休が取りやすいです。
「イクボス」の類語・言い換え
「イクボス」をほかの言葉に言い換えるには、職場スタッフの出産・育児を含めたプライベートを尊重し、ワークライフバランスを考え、キャリア支援を目指す上司」という言葉の意味を簡潔に伝えるしかありませんが、類語には「イクメン」があります。
育児を楽しみ、積極的に行っている男性、もしくは、そのような人生を送りたいと考えている男性。
併せて覚えたい「イクボス」の関連語
イクボスに興味があったり、「イクボス宣言」をしようと考えたりしている場合などに、ぜひ併せて覚えていただきたい言葉に「イクボス検定」「イクボス企業同盟」があります。
イクボス検定とは?
イクボスプロジェクトを発足させた、「NPO法人ファザーリング・ジャパン」では、イクボスを目指す人向けに動画や検定の模擬試験を公開しています。現時点で自分がイクボスであるかどうか、ぜひ一度試してみてください。
(情報参照元:NPO法人ファザーリング・ジャパン イクボスプロジェクト公式サイト イクボス検定)
イクボス企業同盟とは?
「イクボス企業同盟」はNPO法人ファザーリング・ジャパンの活動に賛同し、以下の要件を満たしていれば加入できます。
①ダイバーシティ経営の推進を行っている、これから行おうとしている。
②管理職の意識や働き方改革を模索している。
③経営トップがそのことに理解があり、経営戦略としてコミットしている。
加入希望の場合は、以下のサイトの内容を確認し、「イクボス企業同盟」「イクボス中小企業同盟」のいずれかから申し込んでみてください。
(情報参照元:イクボスドットコム イクボス企業同盟、イクボス中小企業同盟の加盟について)
「イクボス」を導入する際はしっかりと準備をしよう
「イクボス」は、だたプライベートを応援している、というだけでは成り立ちません。社内制度や法律の理解や仕事に関する実力も伴わなければならないことをしっかりと理解しておきましょう。