「コンティンジェンシー」とは「不測の事態」「偶発性」という意味
「コンティンジェンシー」は、リスク管理に関するビジネス用語として用いられており、「コンティンジェンシープラン」「コンティンジェンシー理論」という使い方をすることも多い言葉です。本記事では、意味や使い方だけでなく、「コンティンジェンシープラン」「コンティンジェンシー理論」の詳しい内容などについてもわかりやすく解説します。
「コンティンジェンシー」の英語は「contingency」
「コンティンジェンシー」は、英語で「contingency」と表記し、次のような意味をもつ単語として使われています。
・偶発性
・偶然性
・不確実性
・不測の事態
・偶発事件/事象
参考までに熟語や文章の中での使い方も少し紹介しておきます。
・I plan to make a plan for contingency within this month.
(私は、今月中に不測の事態に備えた計画を立てるつもりです。)
・contingency bill
(有事法案)
・contingency capacity
(不測事態対応能力)
・contingency fund
(危険準備金)
・contingency risk
(偶発的危険)
日本語においての「コンティンジェンシー」とは
日本語においての「コンティンジェンシー」は、「不測の事態」「偶発性」の意味で使われますが、企業によって、「コンティンジェンシー」「コンティンジェンシー理論」「コンティンジェンシープラン」というように、用いられる形はまちまちです。ですので、いずれの場合でも正しく解釈できるようにしておかなければなりません。
コンティンジェンシー理論とは?
「コンティンジェンシー理論」とは、「どのような環境に置かれても力を発揮するリーダーはいない」という理論のことをいいます。もう少しわかりやすく説明すると、組織の特性や人材はすべて同じではなく、100の組織があれば100の特徴が存在するものです。ですので、「これが最適!」とあてはめられるものはなく、リーダーになる人は、決められた方法を貫き通すのではなく、周囲の変化に対応しつつ、運営していく必要がある、という考え方になります。
コンティンジェンシー理論が注目される理由
昔は、「指導力がある」「最後まであきらめない」「声に迫力がある」「大柄である」などの特徴がリーダーの素質としてあげられていました。しかし、技術の進化で時代は大きく変化していき、そのスピードに対応するためには、今おかれている状況に合わせた対応力も必要だという考えが生まれ、「コンティンジェンシー理論」が注目されるようになりました。
コンティンジェンシー理論のメリット
実際に、コンティンジェンシー理論に注目するようになるとどんなメリットがあるのでしょうか。
・いかなる状況下においても柔軟に対応できる。
・組織変革がしやすい。
・ヒエラルキーに左右されない。
・対応力の高いリーダーを育成できるようになる。
組織というものは、常に同じ環境で仕事ができるとは限りません。急な病気による欠員、システムトラブルなど、さまざまな環境変化にも柔軟に対応できる力が必要です。そういった力をもった人材がさらに力をつけていくことで、高い対応力をもったリーダーが育成されます。
また、コンティンジェンシー理論を採用していると、年功序列、入社順といったピラミッド型組織に形態にとらわれなくなるので、適材適所に配置するというような、組織変革がしやすくなるのもメリットといえます。
コンティンジェンシー理論のデメリット
多くの場合、メリットが目立っていたとしても、ひとつくらいはデメリットがあるものです。では、コンティンジェンシー理論にはどんなデメリットがあるのでしょうか。
・環境変化への適合が困難である。
・組織の軌道修正が困難である。
・専門性が習得しづらい。
また、どんな状況でも柔軟に対応していけるのがコンティンジェンシー理論のメリットなのですが、方向性の間違いに気づかない場合は間違ったまま進んでいくといった危険性があります。
そして、状況に応じた人材配置を行っていくと、柔軟性は向上していくものの、専門性は身につきにくくなるのもデメリットのひとつです。
コンティンジェンシープランとは?
「コンテンジェンシープラン(Contingency Plan)」を日本語で表すと「緊急時対応計画」で、「不測の事態」「偶発的な事象」が起こった際、リスクを最小限に抑えるため、事前に対応方法や対策などを定めた計画のことをいいます。
コンティンジェンシープランが注目される理由
昔は、大きなリスクといえば自然災害や感染症程度だったかもしれませんが、技術が進化した現代においては、自然災害や感染症のほかに、サイバー攻撃、システム障害、テロ攻撃なども加わり、リスクも多様化してきました。そのため、それぞれのリスクに対した計画が必要とされ、昨今特に注目を浴びるようになってきました。
コンティンジェンシープランの目的
コンティンジェンシープランは、緊急事態の中で、被害拡大を抑え、リスクを最小限にすることを目的として計画されます。起こりうるすべてのことを予測するのは難しいとしても、極力具体的な行動や施策を用意しておけば、被害を最小限にすることが可能です。
コンティンジェンシープランの効果
コンティンジェンシープランを用意しておけば、緊急事態時の対応が迅速に行えるようになります。的確な対応が行われていれば、事態が治まった後、通常に戻しやすくなるので、関係各所への影響も最小限に抑えることが可能です。
混同されやすい「コンティンジェンシー」と「BCP」の違い
「BCP」とは、「Business Continuity Planning」の略で、日本語で表すと「事業継続計画」です。
BCPは、災害時、システム障害時に、事業の継続や早期復旧を図るための計画です。一方、コンティンジェンシーは、あくまでの緊急時の対応のみを指しており、BCPのような「事業を継続」や「早期復旧」は目的としていません。
「コンティンジェンシー」の使い方・例文
「コンティンジェンシー」は、意味がわかれば使い方は難しくありません。ここでは会話の中でどのように使われるのか、例文で紹介しておきます。
・コンティンジェンシー理論を活用し、当社でもリーダーの育成に力を入れていくつもりだ。
・コンティンジェンシープランのおかげで今回の地震での被害は最小限に抑えられた。
「コンティンジェンシー」の類語・言い換え
「コンティンジェンシー」を日本語で言い換える場合は、意味同様に「不測の事態」や「不慮の事故」があてはまりますが、カタカナ用語の類語はありません。
「コンティンジェンシー」の意味・関連する言葉を正しく理解しよう
日常生活の中で「コンティンジェンシー」を使うことはほとんどないでしょう。しかし、多くの企業では緊急事態事態時の対策は用意されているので、よく見聞きする言葉です。そのため、BCPとの違いも含め、明確に覚えておくことをおすすめします。