マッチポンプとは?自作自演との違いやマッチポンプ商法についても解説

マッチポンプとは?

マッチポンプとは、「わざと自分で問題を起こし、それを自分で解決してみせることで何らかの利益を得ようとすること」を意味するカタカナ語です。

名声や金銭など、自分にとって価値のある何かを得るために、不必要なトラブルを故意に引き起こし他人に迷惑をかける行為がマッチポンプ。悪い意味合いで使うのが基本です。

自分が原因で生じたトラブルを自分で解決し、結果的に自分が得をしたのだとしても、次のような場合はマッチポンプとはいいません。

・意図したものではなく偶然に起こった問題だったとき
・自分の行いによってどのような結果が生じるか理解せずに起こした問題だったとき

自分の利益を得るため、どのようなことが起こるか承知のうえで問題を起こしているときにマッチポンプといいます。

マッチポンプの語源

マッチポンプは、英語の「match」とオランダ語の「pomp」を組み合わせて作られた和製英語です。「match」は火をつけるマッチ棒のこと。「pomp」は水をかけて火を消すポンプのことです。

1961年に開かれた衆議院本会議で、ある議員が政府の政策の矛盾を指摘するために「マッチ・ポンプ方式」という言葉を使ったのが始まりといわれています。

この議員は、公共料金を上げて物価を上昇させておきながら、物価値上げを抑制する政策が必要であると世間に思わせようとするのはおかしいと主張しました。

「公共料金を上げて物価を上昇させる」のがマッチ、「物価値上げを抑制する政策」がポンプです。

また1960年代には、ある政治家が政財界の癒着を調べ批判する一方で、「癒着の追求をやめてもらいたかったら金を払え」と恐喝していた政治汚職事件も起きました。これが「政界のマッチポンプ」といわれ大いに非難されたことで、マッチポンプというカタカナ語が世間に浸透しました。

ビジネスでのマッチポンプ

ビジネスでもマッチポンプはよく使われています。次のようなものがビジネスでのマッチポンプです。

ビジネスでのマッチポンプ1
自分でこっそりトラブルを起こしておき、それを自分が解決することで自分の評価を上げる
ビジネスでのマッチポンプ2
自分でこっそりトラブルを起こしておき、そのトラブルを解決できる商品やサービスを売りつける
ビジネスでのマッチポンプ3
特別問題はないのに、何らかの問題があるなど相手の不安をあおることをいって、その問題を解決できる商品やサービスを売りつける

マッチポンプ商法とは

マッチポンプは、自社の商品やサービスを売るための営業手法のひとつとして使われる場合があります。そのような営業手法のことをマッチポンプ商法と呼びます。

例1
太る原因になる美味しいお菓子を売るメーカーが、ダイエットサプリを販売する
例2
手荒れの原因になる食器用洗剤を売るメーカーが、ハンドクリームを販売する
例3
ネット広告をブロックするプログラムを開発したIT企業が、広告主向けにそのプログラムをかいくぐって広告を表示できるようにするプラグラムを開発する

これらは合法的なマッチポンプ商法ですが、消費者にマッチポンプ商法だと気づかれると企業イメージが悪くなってしまう恐れがあります。

違法なマッチポンプ商法もある

マッチポンプ商法のなかには、次の例のように詐欺などの違法行為とみなされる悪質なものもあります。

例1
害虫駆除業者が、こっそりシロアリを放っておいた家の家主に床下の無料点検サービスを勧め、「シロアリがみつかったから駆除しましょう」と契約を取る
例2
盗聴器調査業者が、「家から盗聴電波が出ている」とうそをついて調査を持ち掛け、さも今盗聴器をみつけたかのように演技して撤去費用を請求する
例3
口コミ削除業者が、Googleレビューなどに特定の店や医療機関の悪い口コミを大量投稿しターゲットの評価を下げる。その後、その店や医療機関に「悪質な低評価口コミを削除できる」という営業のメールや電話をし契約を取ろうとする
例4
病院や動物病院などの医療機関が、本当は健康な患者に不必要な治療や投薬を行って副作用を起こし、それを治療することで治療費を稼ぐ
例5
動物病院が、本当は健康なペットの飼い主に治療が必要とうそをつき、高額な治療を受けさせる

被害にあうことがないように注意してください。

マッチポンプと自作自演の違い

マッチポンプと自作自演は似ていますが、完全に同じ意味の言葉ではありません。

自作自演
自分が作った台本や楽曲を、自分で演じたり演奏したりすること

この意味からニュアンスが広がって、「計画から実行までをすべて自分だけで行うこと」も自作自演というようになりました。とくに、自分の利益を得るためにこのような行為をすることを自作自演という場合が多いです。このことから、マッチポンプと自作自演が同じ意味の言葉と思っている人もいます。

しかし、本来の自作自演は悪い意味ではなく、自分の楽しみのためにだれにも迷惑をかけず行うものです。そのため、いい意味で使われることもあります。

ゆるキャンの「マッチポンプ」は「自作自演」

日本の漫画 ゆるキャン△に、「マッチポンプ」というセリフが登場します。ゆるキャン△は、キャンプや旅行を楽しむ女子高校生たちを描いた作品です。

このセリフが使われたのは、主人公が寒い冬にわざわざキャンプに出かけて、自販機の温かい飲み物を飲むシーンや、温かい温泉につかるシーンです。

身体の冷える冬のキャンプを自ら計画して実行し、冷え切った体に温かさが染み入る快感を楽しむ。誰にも迷惑をかけていませんね。

漫画では「マッチポンプ」が使われていますが、本来の言葉の意味に従うならば「自作自演」というほうが正確です。

マッチポンプの使い方・例文

マッチポンプの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・企業のマッチポンプ疑惑が報道された。
マッチポンプを指摘される。
マッチポンプといわれないように気をつける。

マッチポンプの類語・言い換え表現

マッチポンプの類語は、先に紹介した「自作自演」のほかに「やらせ」と「捏造」があります。次のように使います。

例文
・強盗事件は自作自演だった。
・やらせ疑惑をかけられた。
・シロアリ被害を捏造する。

マッチポンプは英語だと?

マッチポンプは和製英語なので、「match-pump」と訳しても英語圏の人には通じません。代わりに、次のような表現を用いるとニュアンスを伝えられます。

マッチポンプの英語
stirring up trouble to get credit:信用を得るためにトラブルを起こす
to stir up trouble in order to gain the credit for solving it:解決した功績を得るために問題を引き起こす
act in the play of one’s own writing:自作自演

機会があったら使ってみてください。

マッチポンプの悪影響も理解しよう

マッチポンプの意味は、「わざと自分で問題を起こし、それを自分で解決してみせることで何らかの利益を得ようとすること」です。

ビジネスでマッチポンプが使われることもありますが、ばれると消費者の信用を失ってしまう可能性があります。また、詐欺まがいの悪質なマッチポンプもあるので、被害に合わないよう注意が必要です。

マッチポンプの意味だけでなく、危険性もあわせて理解しておきましょう。