「芳しくない」とはどんな意味?ビジネスでの使い方や言い換えに使える類語も解説

「芳しくない」とは?

「芳しくない」の読み方は「かんばしくない」です。「よろしくない」と読む人もいますが、これは間違った読み方なので注意してください。

意味は「状態がよくない」です。

はっきり「悪い」と言い切る言い方ではなく、「想定していたよりもよくない」「どちらかといえば悪い」「あまり望ましい状況とはいえない」などのようなニュアンス。遠回しにやんわりと状態がよくないことを伝えたいときに便利な日本語です。

「かぐわしくない」と読むと意味が変わる

「芳しくない」は「かぐわしくない」と読む場合もあります。しかし、こちらの読み方をすると「いい匂いがしない」「 心が引かれない」の意味になってしまいます。

「状態がよくない」といいたい場合は、「かんばしくない」と読むようにしましょう。

「芳しくない」は目上に使える

「芳しくない」は、古語「かぐわし」から生まれた言葉「芳しい」に、打消しの意味をもつ「ない」をつなげた言葉です。「かぐわし」の意味は、「香り高い。美しい。心がひかれる」。

「芳しくない」は、大和言葉から生まれたため、柔らかな印象があります。また、遠回しな表現で失礼な物言いになりにくいです。そのため、上司などの目上の相手にも使えます。しかし敬語ではないので、使用するときは敬語と組み合わせる必要があります。

「芳しくない」を使うシーン

「芳しくない」は、ビジネスで何かの結果や状況を伝えるときや、体調の話、天気の話題などでよく使われます。

ビジネスでの「芳しくない」

ビジネスでは、次のようなときに「芳しくない」を使用します。

・会社の業績が思ったほどよくないとき
・営業成績が思ったほどよくないとき
・作業の進捗があまりよくないとき
・顧客からの注文が想定していたほど入っていないとき
・クライアントからの評価がそれほどよくないとき
・商品の評価があまりよくないとき
・人間関係があまりよくないとき

「芳しくない」を使うと、「よくない(悪い)」の程度が「相手が期待しているものより少し悪い」くらいのニュアンスで相手に伝わります。砕けた言い方だと「ちょっと微妙」や「いまいち」くらいの感覚です。

そのため、具体的な話を避けて、状況がよくないことを伝えたいときによく用いられます。

具体的な情報が必要なときには使わない

「芳しくない」は、具体的なことを濁して遠回しな言い方をする表現です。

そのため、正確な状況を伝えなければならないときには使えません。相手が数値での情報や「できる」「できない」など、具体的な話を聞きたがっているときは使用しないようにしましょう。

このようなシチュエーションで「芳しくない」を用いると、「よくないことを隠そうとしているのではないか」と思われる恐れがあります。

体調の話での「芳しくない」

体調の話での「芳しくない」は、「体調がよくない」ときに使います。

自分や身内の体調について、何の病気になったのかや、病状がどうなのかなど具体的な話を濁して「よくない」ことだけを伝えられます

また、はっきり「体調が悪い」といってしまうよりも、相手を心配させずに済むメリットがあるでしょう。

「病状が芳しくない」は避けるのが無難

「病状が芳しくない」という言い方をしても間違いではありません。しかし、この言い方に違和感を覚える人もいるので、使わないほうが無難です。

それは、「芳しくない」のもとになった「芳しい」が、好ましいものや立派なものに用いる誉め言葉にあたるため。

「病状」は、健康ではない人に使用する言葉。つまり、「病状」は平時の状態よりいい状態であることがない言葉なので、いいものに対して用いる「芳しい」を使用すると違和感が出てしまうのです。

「病状が芳しくない」は、「病状が思わしくない」に言い換えることをおすすめします。「思わしくない」の意味は「いいとは思えない」「思っていたよりもよくない」です。

MEMO
「芳しい」が、実際に誉め言葉として使われるのは香りについてのみ。そのほかの事柄では誉め言葉として使用されることはなく、「芳しくない」の形で用いられるのが一般的です。

天気の話での「芳しくない」

天気の話での「芳しくない」は、「雲行きが怪しい」という意味です。

「いい天気になってほしい」という希望に反して、天候が悪いほうに傾いているというニュアンスになります。

「芳しくない」の使い方・例文

「芳しくない」の意味がわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・分析によって成果が芳しくないことが判明した。
・せっかくのチャレンジだったが、芳しくない結果に終わってしまった。
芳しくない状況に頭を悩ませる。
・2人の様子が芳しくないと聞き、しばらく距離を置かせることにした。

「芳しくない」の類語・言い換え表現

「芳しくない」の類語は、「宜しくない」「好ましくない」「望ましくない」「はかばかしくない」です。それぞれの意味と使い方をおさえておきましょう。

宜しくない
【意味】
いいとは決していえないさま

【例文】
彼の評価は正直あまり宜しくない。

好ましくない
【意味】
・感じがよくない
・好感が持てない
・望ましくない
・そのようになって欲しくない

【例文】
治安の悪化は好ましくない状況だ。

望ましくない
【意味】
・そうあって欲しくない
・願わない

【例文】
行き過ぎた円安は望ましくない。

はかばかしくない
【意味】
・物事が順調に進んでいない
・いい方向に向かっていない
・期待どおりにははかどっていない

【例文】
いろいろな対策を実施したが、売れ行きははかばかしくない。

「芳しくない」は英語だと?

「芳しくない」を英訳するときは、次の単語や表現を使うとニュアンスを伝えられます。

「芳しくない」の英語
unsavory:(道徳的に)芳しくない、いやな味がする、うまくない、不快な、いやな
unfavorable:好意的でない、否定的な、好ましくない、不利な、不向きな、不都合な、不運な、不吉な
unsatisfactory:不満足な、不十分な、意に満たない、順調に行かない、不出来である
not very good:いまひとつである、パッしない、あまりよくない

伝えたいニュアンスに近い用語を選んで使用してください。

「芳しくない」を上手に使おう

「芳しくない」の意味は「状態がよくない」です。

具体的な話をせずに、状況がよくないことだけを伝えられるのでビジネスでもよく用いられます。しかし、具体的な説明が必要なときに「芳しくない」を使用すると、相手に不信感を抱かせてしまう場合も。

シチュエーションをよく見極めて、上手に「芳しくない」を使えるようになりましょう。