マークアップとはどんな言葉?会計やIT分野での意味や関連語も解説

マークアップとは?

マークアップは、会計や印刷、ITなど、複数の分野で使われているカタカナ語です。次の意味をもっています。

マークアップ
原価に付加した金額・比率
②印刷物の組指定
③コンピュータで、識別用のマークをつけること

ビジネスでもよく使用される、マークアップの意味をくわしくみていきましょう。

会計でのマークアップの意味

会計でのマークアップの意味は、「製品やサービスの仕入れや製造にかかるコスト(原価)に上乗せされる一定の金額」です。

マークアップを設定する目的は、製品やサービスの販売一つひとつから、確実に必要な分だけの収益を得ること。

マークアップで、値下げや割引による利益率の減少や在庫にかかる費用など、仕入れや製造以外にかかるコストをまかないます。さらに、利益もマークアップからしっかり確保しなければなりません。

つまりマークアップは、ビジネスとして成り立つ製品やサービスの販売価格を導き出すために必要なものなのです。

マークアップとマークダウン

会計でのマークダウンの意味は、「最初に決めた売値から値下げすること」です。

商品が売れ残らないようにするためのもので、商品の売れ行きがあまりよくないときや特売を行うときなどに実施します。マークアップでは、マークダウンが行われるかもしれないことも念頭に入れて上乗せ金額が決められます。

マークダウンは、原価に上乗せ(マークアップ)した金額の一部を削り取ることなので、マークアップの対義語といえます。

マークアップは見極めが重要

マークアップは、消費者がその製品やサービスにいくらまでなら払っていいと思えるか、その金額を無視して決定することはできません。

マークアップを少なく見積もると、ビジネスとして成り立たなくなります。

しかし、マークアップを多く設定しすぎて消費者が払ってもいいと思える価格を超えてしまうと、製品やサービスを買ってもらえなくなってしまいます。競合他社の価格設定も、消費者の判断に大きな影響を与えます。

情報収集をしっかり行い、消費者が許容できる範囲のマークアップを見極めてください。

マークアップ率とは?

マークアップ率とは、製品やサービスの仕入れや製造のコスト(原価)に対するマークアップの割合のことです。

マークアップとマークアップ率は、次の計算式で求めます。

マークアップ=製品やサービスの販売価格 – 製品やサービスの原価
マークアップ率=マークアップ ÷ 製品やサービスの原価 × 100

例えば、1,000円で作った製品を1,200円で販売する場合、次のようになります。

マークアップ
1,200 ‐ 1,000 = 200
マークアップ率
200 ÷ 1,000 × 100 = 20(%)

逆にマークアップ率から販売価格を求めたいときは、次の式を使ってください。

販売価格=製品やサービスの原価 ×(1 +マークアップ率)

先ほどの製品の例の場合は、この式に原価とマークアップ率を当てはめ、次のように計算します。

1,000 ×(1 + 0.2)= 1,200
販売価格 1,200円

マークアップ率のことを略してマークアップと呼ぶ場合もあります。

マークアップとマージン

マージンは、製品やサービスの売上に対する利益がどのくらいあるかをざっくり示すものです。「製品やサービスの販売価格と原価の差」を計算するとマージンを求められます。

マージンで求める利益は、販売にかかる人件費、運搬費、倉庫費などの費用が含まれていません。そのため、実際の利益はマージンで求める利益よりも少なくなります。

原価に上乗せされている(上乗せする)金額を示しているので、ここまではマークアップとマージンに違いはあまりありません。

マークアップとマージンの違い

マークアップとマージンの違いは、割合として考えたときに出てきます。

マージンを割合として考えるときは、次の式で計算します。

マージン率=(製品やサービスの販売価格 ‐ 製品やサービスの原価)÷ 製品やサービスの販売価格 × 100

先ほどの1,000円で作った製品を1,200円で販売する例で考えると、次のようになります。

(1,200 ‐ 1,000)÷ 1,200 × 100 = 16.67%(小数第三位を四捨五入)

マークアップ率は、「製品やサービスの販売価格と原価の差」を原価で割って求めていましたよね。

それに対しマージン率は、「製品やサービスの販売価格と原価の差」を販売価格で割って計算します。通常、原価よりも販売価格のほうが高いため、マークアップ率よりマージン率は小さくなります。

マージン率を使って販売価格を求めたいときは、次のように計算します。

販売価格=製品やサービスの原価 ÷(1-マージン率)

上記の製品の例で計算すると、次のようになります。

1,000 ÷(1-0.1667)= 1,200(小数点以下切り捨て)

マージン率が小数第三位を四捨五入しているのできっかり1,200円にはなりませんが、ほぼ同じ金額を求めることができます。

その他の分野でのマークアップの意味

会計以外の分野では、マークアップが会計のときとはまったく異なる意味で使われています。それぞれの分野でのマークアップの意味をみていきましょう。

印刷でのマークアップの意味

印刷でのマークアップの意味は、「手書きの原稿から活字を組めるように、校正者が組版作業者に対する指示を原稿用紙に記入すること」です。

マークアップでは、原稿のどの文が「タイトル」でどこが「著者」を示す文なのかなど、文の構成が組版作業者にわかるように、原稿用紙に書き込みで指示されます。また、文のそれぞれに対して書体や文字のサイズ、行数、行間、字数、字送りなど、どのように活字を組むのかの指示も書き込まれます。

組版作業者は、この書き込みの指示に従って原稿の内容を活字で組み上げ、見た目が美しく読みやすい版を作っていきます。

MEMO
活字とは、文字や記号の一つひとつをハンコみたいに押せるように作った、凸型の字型です。昔は、たくさんの活字を文章になるように手作業で組み合わせて、印刷に使う版を作って印刷していました。

ITでのマークアップの意味

ITでのマークアップは、印刷でのマークアップから派生した言葉です。

「人間が書いた文章を、コンピュータが理解できるようにマークをつけること」を意味します。

コンピュータは、人間の書いた文章の内容を理解できません。そのため、人間が何もしないと、文章の「タイトル」や「見出し」「箇条書き」などの構造も理解できません。

マークアップは、コンピュータが文書構造を理解できるよう、ここは「タイトル」、こっちは「見出し」のように目印をつけることをいいます。

MEMO
マークアップするときに用いるコンピュータの言葉をマークアップ言語と呼びます。WEBページを作るときに使う、HTMLやXMLなどが有名です。

マークアップとマークダウン

マークダウンは、マークアップ言語を簡略化したコンピュータ用の言葉です。

マークアップ言語は、記号と英数字を組み合わせた「タグ」と呼ばれるものを使って、コンピュータに文書構造を教えています。しかし、マークアップ言語は種類がたくさんあるため、人間が覚えるのにたくさんの勉強や練習が必要です。

マークダウンは、そんなマークアップ言語の欠点を改良し、簡単な書き方でコンピュータに指示を出せるように作られています。

マークアップとコーディングの違い

コーディングの意味は、「プログラミング言語やマークアップ言語などを使って、コンピュータプログラム全体を記述すること」です。

コーディングで行うたくさんの作業のなかに、マークアップが含まれています。

コーディングでは、CSS(文字の見た目をデザインする言語)や、JavaScript(WEBページのデザインに動きを加える言語)なども使用されます。

農業や輸出入でのマークアップの意味

農業や輸出入の分野では、マークアップが「輸入差益」の意味で使われています。

「輸入差益」とは、海外から安い価格の農畜産物を輸入し卸業者に売却するときに、国産品との価格差を埋めるために政府が課す調整金のことです。

買い入れと売却の差額は、農畜産物の備蓄にかかる費用や、国内の農業を保護するための財源として使用されます。

マークアップの使い方・例文

マークアップの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・輸入価格の下落によりマークアップが多くなる。
マークアップ言語を勉強する。
・iPhoneのマークアップ機能の使い方を紹介する。
マークアップエンジニアになりたい。

iPhoneのマークアップは、写真に装飾を施したり画像に注釈をつけたりできる機能です。マークアップエンジニアは、WEBページをマークアップし、サイトの価値を高める専門職です。

マークアップは英語だと?

マークアップは英語だと「markup」と表記します。

markup
・希望価格を決めるため原価に加算される額。値上げ。利益の上乗せ
・印刷されることになっているものを活字組みするための詳細な文体の指示

「markup」は、「法案の最終折衝」という意味で使われる場合もあります。この意味はカタカナ語のマークアップにはないので、和訳するときは注意してください。

マークアップの意味を読み取れるようになろう

マークアップは、「原価に付加した金額・比率」や「印刷物の組指定」「コンピュータで、識別用のマークをつけること」など複数の意味をもつカタカナ語です。

会計や印刷、ITなど、複数の分野でよく使用されています。分野ごとの意味や関連語を頭に入れておき、文脈に合うニュアンスで解釈できるようになりましょう。